Decisions — 横断的な意思決定ツリー¶
最終更新: 2026-07 · owner: Youngjin · volatility: 中 ← index へ
L0 TL;DR: 顧客が頻繁に直面する 4 つの分岐点を、散文ではなく決定表/ツリーで示します。各決定はピラーを横断します。急ぐ場合は該当する表だけを見て方向を定めてください。
目次: 1) Cloud vs Edge · 2) NVIDIA vs オープンソース · 3) GPU 確保戦略 · 4) Build vs Buy
1) Cloud training vs Edge inference 境界¶
核心的な問い: 「この推論はクラウドに置けるのか、それともエッジに置く必要があるのか?」
最も重要な判別要素は制御周波数1です。
graph TD
Q{推論周波数の要求は?}
Q -- "30~100Hz+ 反応型制御<br>(バランス·力·把持·歩行·回避)" --> EDGE["🔴 必ずエッジオンボード (Jetson Thor/Orin)<br>クラウド往復は不可<br>System 1(軽量 diffusion/flow-matching ポリシー, sub-20ms)"]
Q -- "few-Hz ~ sub-1Hz<br>高レベルの計画·再計画·ツール選択·シーン理解" --> CLOUD["🟢 クラウド/非同期が可能 (Bedrock AgentCore, 大型 VLM)<br>System 2(重量級 VLM プランナー, 5~10Hz またはそれ以下)"]
Q -- "両方が必要(ほぼすべての実ロボット)" --> SPLIT["🟡 分離デプロイ: System 2=クラウド, System 1=エッジ<br>action chunking で 2 つの rate を接続 ← 標準アーキテクチャ"]
| 区分 | System 22(計画) | System 1(制御) |
|---|---|---|
| 周波数 | 5~10Hz 以下 | 50~200Hz |
| 遅延許容 | あり(非同期) | なし(sub-20ms) |
| 位置 | クラウド (AgentCore) またはオンボード | エッジオンボード (Jetson) |
| モデル | 大型 VLM/LLM | 軽量 diffusion/flow-matching3 |
| AWS | Bedrock AgentCore, EC2 | IoT Greengrass V2, SageMaker Neo, ONNX/TensorRT |
判定原則: 「リアルタイムの安全·反応が絡むループならエッジ、考える時間があるならクラウド。」action chunking4 が橋渡しです。 根拠: pillar-4 エッジ、pillar-2 System1/System2、pillar-5。
2) NVIDIA フルスタック vs オープンソース¶
核心的な問い: 「Isaac に全賭けするか、それともオープンソースで行くか?」
graph TD
Q{ワークロードの性質は?}
Q -- "フォトリアルなレンダリング + 合成データ生成(SDG) + フルスタック統合" --> ISAAC["Isaac Sim/Lab (🟢 GA 5.1)<br>GPU は RTX 必須 (G6e/G7e)"]
Q -- "高速な RL 反復 · 微分可能物理 · クロスベンダー GPU · 軽量" --> MUJOCO["MuJoCo/MJX (🟢)<br>コンピュート GPU(P5 A100/H100) も活用可 → コスト優位<br>Unitree 実使用 [1](本番検証 → pillar-3)"]
Q -- "ROS 2 ネイティブ統合 · CPU · 従来型ロボティクス" --> GAZEBO["Gazebo (🟢 Jetty/Harmonic)<br>⚠️ Classic 11 は EOL · GPU 並列 RL には不適"]
Q -- "「話題性」の Genesis?" --> GENESIS["⚪ PoC/実験のみ<br>「430,000 倍」は反論済み [1](→ pillar-3)· 本番依存は禁止"]
| 基準 | Isaac Sim/Lab | MuJoCo/MJX | Gazebo |
|---|---|---|---|
| 成熟度 | 🟢 GA 5.1 | 🟢 GA(Warp は Alpha) | 🟢 GA(Classic EOL) |
| GPU | RTX 必須(A100/H100 ✗) | コンピュート GPU 可能(P5 ✓) | CPU 中心 |
| レンダリング/SDG5 | 最高 | 限定的 | 限定的 |
| 微分可能6 | △ | ✓ (JAX) | ✗ |
| ROS 統合 | 可能 | 補助 | ネイティブ |
| ライセンス | Apache(ソース)+AI Enterprise(再配布/SaaS) | Apache | Apache |
| AWS | G6e/G7e + AMI + Batch | EC2(P5 含む)+ Batch | EC2 + Batch |
判定原則: ワークロードで選べばよいです。「AWS は 3 つとも問題なく動かせる」 —— NVIDIA 依存を懸念する顧客に対する中立ポジション。MuJoCo ならコンピュート GPU を再活用できるコスト優位があります。 根拠: pillar-3。
3) GPU 確保戦略¶
核心的な問い: 「GPU をどう確保するか?On-Demand が取れない。」
graph TD
Q{学習の規模·期間は?}
Q -- "少数 GPU · 単発 · LoRA ファインチューニング(多くの出発点)" --> OD["On-Demand G7e/G6e<br>即時·柔軟 · 十分"]
Q -- "大規模 · 将来時点が確定 · 超大型クラスター(P6e-GB200 など)" --> CB["Capacity Blocks for ML<br>事前予約し、UltraServer を確保"]
Q -- "柔軟な日程 · コスト最適 · 数日~数週単位の学習ウィンドウ" --> FTP["Flexible Training Plans (SageMaker HyperPod)"]
Q -- "RTX レンダリングが必要 (Isaac Sim) vs コンピュートのみ (MuJoCo/VLA 学習)" --> RC["レンダリング=G6e/G7e (RTX)<br>コンピュート=P5/P6 (A100/H100/B200) または MuJoCo なら P5 を再活用"]
| 戦略 | いつ | AWS |
|---|---|---|
| On-Demand | 少数·単発·探索 | EC2 G7e/G6e/P6 |
| Capacity Blocks for ML | 大規模·時点確定·UltraServer | P6e-GB200、予約 |
| Flexible Training Plans | 柔軟な日程·コスト最適 | SageMaker HyperPod |
| Trainium | LLM 学習コスト削減 | Trn2/Trn3 ⚠️ VLA7 は公開事例なし [4](→ pillar-2) |
判定原則: 開始は On-Demand G7e。取れないか大規模なら Capacity Blocks/Flexible Training Plans。Trainium は LLM には安全だが、VLA/ロボティクスは検証事例なし —— 提案時にはリスクを明示します。 根拠: pillar-2 学習スタック、pillar-3。
4) Build vs Buy(基盤モデル)¶
核心的な問い: 「基盤モデルをファインチューニング8するか、それとも自前で学習するか?」
graph TD
Q{データ·目標·リソースは?}
Q -- "実デモ 100~数千個 · 特定タスク · 迅速な結果" --> LORA["オープン VLA のファインチューニング (LoRA)<br>単一 G7e、1 日 PoC ← 99% の現実<br>商用ならライセンス確認: π=Apache-2.0 ✅, OpenVLA=MIT ✅, GR00T=要確認 ⚠️"]
Q -- "複数 embodiment · 大規模な実データ · バックボーンまで調整" --> FULL["フルファインチューニング (P6/HyperPod)<br>70~100GB+ GPU"]
Q -- "ゼロからの事前学習(フロンティア VLA を自社開発)" --> PRE["🔴 ごく少数のみ · マルチノード Blackwell クラスター·大規模な実データ<br>大半の顧客には非推奨 —— ファインチューニングで十分"]
Q -- "推論·計画レイヤーのみ必要(低レベル制御は不要)" --> INFER["Gemini Robotics-ER(API) または AgentCore でオーケストレーション"]
| オプション | データ | GPU | いつ |
|---|---|---|---|
| LoRA9 ファインチューニング | 100~数千デモ | 単一 24~40GB | デフォルトの出発点 |
| フルファインチューニング | 大規模な実データ | 70~100GB+ / マルチノード | 複数 embodiment10 |
| 事前学習(Build)11 | 超大規模 | Blackwell クラスター | ごく少数のフロンティア |
| 推論レイヤーの Buy | — | — | 制御はオープンモデル、計画は API |
判定原則: ほぼ常にファインチューニング(Buy+adapt) が答えです。 ゼロからの事前学習はごく少数。商用ではライセンスが最初のゲート(GR00T の非商用に注意)。「シミュレーションだけで操作ポリシー」は落とし穴 —— 実データが必須(pillar-4)。 根拠: pillar-2、pillar-1 データ·ライセンス、pillar-4。
付録 — リージョン/データレジデンシーの迅速判定¶
(下表は揮発性が高い —— 2026-07、AWS 公式リージョン表 [1] で直接確認した基準。引用前に最新のリージョン表を再確認)
| サービス | ソウル(ap-northeast-2) | 備考 |
|---|---|---|
| Bedrock AgentCore(コア+Policy+Evaluations) | ✅ | Agent Registry·Payments は ✗(東京は Registry ✅)—— 2026-07 リージョン表基準 |
| EC2 G7e / G6e / P6 | ✅(リージョン別に確認) | Capacity Blocks を活用 |
| SageMaker HyperPod | ✅ | Flexible Training Plans はリージョン拡張中 |
| IoT Greengrass V2 | ✅ | V1 は 2026-06 EOL |
データレジデンシーを懸念する顧客: まず AgentCore ソウル GA を確認させて安心させます(古い「ソウル未対応」情報を訂正)。→ pillar-5。
owner: Youngjin · updated: 2026-07 · volatility: 中(ツリーの原理は低、インスタンス/リージョンの詳細は高)
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制御周波数(control frequency) — ロボットが 1 秒間に何回制御コマンドを更新するか(Hz)です。バランス・把持のような反応ループには 30~100Hz 以上が必要で、往復遅延のあるクラウドでは物理的に不可能です — 推論のデプロイ位置を分ける最初の判別因子です。 ↩
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System 2 / System 1 — 認知科学の「遅い思考 / 速い反応」の区分をロボットアーキテクチャに適用した構造です。System 2 は遅い大型モデルが計画を(5~10Hz)、System 1 は小さなポリシーがリアルタイム制御を(50~200Hz)担います。推論をクラウドに置くかエッジに置くかを分ける基準になります。 ↩
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flow-matching / diffusion action head — ロボットの連続動作をノイズから徐々に洗練して生成する拡散(diffusion)・フロー系の出力モジュールです。滑らかでマルチモーダル(multi-modal)な動作分布を表現でき、最新 VLA の標準アクションヘッドです。 ↩
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action chunking — 毎ステップ動作 1 個ではなく、将来の動作を複数ステップ(チャンク)まとめて一度に予測する手法です。推論回数を減らし、リアルタイム制御の周波数を満たしやすくします。 ↩
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合成データ生成(SDG, Synthetic Data Generation) — シミュレーターで学習用画像とアノテーション(ラベル)を自動生成する技法です。ラベリングコストがゼロに収束するのが最大の利点です。🎥 Isaac Sim Replicator SDG チュートリアル ↩
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微分可能物理(differentiable physics) — シミュレーション計算全体が微分可能で、結果から入力へ勾配を逆伝播できる物理エンジンです。ポリシー・パラメータを勾配降下法で直接最適化できます(代表は MJX)。 ↩
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VLA (Vision-Language-Action) — カメラ映像(Vision)と自然言語の指示(Language)を入力に、ロボットの動作(Action)を直接出力する基盤モデルです。「コップを掴んで」と言えば関節の動きを生成する、という具合です。🎥 NVIDIA Isaac GR00T N1 紹介 ↩
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ファインチューニング(fine-tuning) — 大規模データで事前学習されたモデルを、自分のタスク・ロボットの少量データで追加学習させることです。ゼロから学習するよりデータ・GPU が数十~数百倍節約できます。 ↩
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LoRA (Low-Rank Adaptation) — 元の重みは凍結したまま、小さな低ランク(low-rank)行列だけを追加で学習する軽量ファインチューニング手法です。GPU メモリ要求がフルファインチューニングの数分の 1 のため、24GB 級 GPU 1 枚でも可能です。 ↩
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embodiment(エンボディメント) — ロボットの物理的形態・自由度・センサー構成のことです。同じモデルでもロボットアームとヒューマノイドでは embodiment が異なり、データ・ポリシーをそのまま移植できません。 ↩
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事前学習(pre-training) — 大規模な汎用データでモデルをゼロから学習させ、基礎能力を作る段階です。その後、少量データのファインチューニングで特定タスクに合わせます。フロンティア VLA の事前学習はごく少数の組織の領域です。 ↩